オレ達はあと何本論文を書けば東大教授になれるんだ?

【イントロ】
 「何者にも縛られず自由に生きたい」とおもっても、現実のしがらみの中ではやりたいことではなくやれることを選択してしまいがちなのが人生です[1]。わりと自由なイメージのある研究者という職業でも、自分のやりたい研究というよりもプロジェクトの一環としての研究や予算が獲れる研究をやらざるを得ない局面も多々あるかと思います(よく知らない)。そうはいっても、究極的にはPrincipal Investigator(PI)となって自分のやりたい研究をやりたいというのが、自然な気持ちではないでしょうか。
 代表的なPIの形としては、大学教授として自分の研究室を運営するというのが一つの完成形ではないかと思います。それではそんな大学教授には一体どれだけの業績を出せばなれるのでしょうか?「大学教授になりてぇ~」とおもってもどれくらい頑張ればいいのかわからないとやる気が空回りしてしまいます。
 そこで本記事では、最高学府の中でも最高と思われる東京大学を対象に、大学教員がどれくらいの業績を出しているのか、つまりどれくらいの業績を出せば大学教授・准教授・講師・助教になれるのか論文数・引用数・h-indexの観点から調べました。

【方法】
 調査対象は著者の趣味として東京大学工学部物理工学科の教員を対象としました[2]。ホームページに記載されている各研究室の教授・准教授・講師・助教の業績をResearcherID[3]とGoogle Scholar[4]を利用して論文数・引用数・h-indexの観点から調べました。特任教員のかたも含んでいます。どちらのサイトでも結果が見つからなかった方は調査対象から除外しました。基本はResearcheIDで確認し、見つからなかった場合のみGoogle Scholarで調査しました。
 各指標は各人の学位取得年からの経過年数で整理しました。博士中退即助教の方や、修士卒企業就職後アカデミックに戻ってきた方は中退年・修士卒年を経過年数のスタートとしました。

【結果】
図1,図2,図3に論文数・引用数・h-indexと学位取得後経過年数の関係を示します。
縦軸は全て対数表示になっています。

図1 学位取得後年数と出版論文数の関係


図2 学位取得後年数と総引用数の関係


図3 学位取得後年数と出版論文数の関係

 どの指標も経過年数に対して線形に増加していくと予想していたので、割ときれいに指数関数的に増加しているのは面白い結果でした。一つの研究があらたな複数の研究につながることが繰り返されることで上図のような結果になったのかなと思います。
 さて、この結果から各職位のスタッフがどれだけ業績をあげているか視覚化できましたが、それでは各職位になるには最低どれくらいの業績が必要なのか、最小値を調べてみた結果が次の表1です。

表1 各職位各指標の最小値

 どうやら東大教授になるには最低でも論文数60、引用数3139、h-index=27が必要なようです。ハードル高すぎませんかねぇ・・・。
 逆に准教授と講師はあまり変わらないという学びがありました。実際職位としてもどう違うのかよくわからないのが正直なところです。講師ってなんなの?
 また、思った以上に助教とそれ以外の差が大きいなぁという印象です。

【まとめ】
 今回の調査を通して、東大の先生がどれくらいの業績を出しているかを明らかにできました。何人かの准教授の先生は「なんで教授じゃないの?」という業績をお持ちですが、教授になるには業績だけではない他の要素も必要ということだと思いますが、今回の調査ではそこまで明らかにできませんでした。力不足です。
 とはいえ、思った以上に東大教授へのハードルは高いですが、この壁を超えさえすれば、夢のPI、婚活でも東大教授を名乗ってモテモテ間違いないですね!(?)
がんばっていきましょう。

【参考文献】
[1]、My opinion.
[2]、東京大学工学部物理工学科 http://www.ap.t.u-tokyo.ac.jp/
[3]、ReseacherID http://www.researcherid.com/Home.action
[4]、Google Scholar https://scholar.google.co.jp/ 

コメント

  1. 講師の場合、そこにたどり着くまでに10年という制限がないのでそうなったのではないのでしょうか。

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  2. 本記事とは関係ないのですが、科研費採用と論文との相関を調べる方法、何かありませんでしょうか。

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